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ブログ WEBマガジン: 2016年8月アーカイブ

バリアフリー化住宅から団塊世代のリアルを見つめる

≪避けて通れない2025年問題とは≫


2025年は、団塊世代が後期高齢者に突入する年です。
団塊世代は元気な日本を作り上げてきた世代であり、戦後の爆発的な人口増加を象徴する世代でもあります。
日本は若い世代が働いて高齢者を支える仕組みが作られていることから、団塊世代が後期高齢者となる2025年には若い世代の負担が非常に重くなり、医療費も増大するなどの経済的な問題が取り沙汰されています。
さらには、住宅のあり方にも大きな変化をもたらすことが指摘されているため、2025年は大変革が必要だと言われる節目の時なのです。
多くの団塊世代が介護を必要とする時代は確実に来るわけですが、現段階ですべての団塊世代の住宅がバリアフリーになっているとは言い難いのが現状です。
バリアフリーでない住宅のほとんどは、介護が必要な高齢者にとって住みやすい家とは言えません。
さらに、核家族化が進んで、一人暮らしの高齢者も今以上に増えることが予想されています。
そうした中で求められているのは、団塊世代の一人暮らしに適したバリアフリーの家なのです。




≪団塊世代の在宅介護が不可避になる可能性も≫


高齢者の一人暮らしに危険がつきものであることは事実ですが、分かってはいても事故が減らない原因は、老人ホームや病院の数にあります。
もちろん、家での在宅介護が良いとして望んで選択している高齢者もいます。
しかし、専門の介護施設で介護を受けたいと望んでも、団塊世代が一気に後期高齢者になると、需要に供給が追いつかない状態となってしまうのです。
現時点でも、老人ホームの数は足りないと言われているので、選択の余地なく高齢者が一人暮らしを強いられる懸念もあります。 特に商業施設や医療施設が自宅から離れた場所にあり、バリアフリーが完備されていない住宅で在宅介護をすると、寝たきりになったり、認知機能が衰える確率が高まる原因になってしまいます。
しかし、こうしたことを理解していても、リフォームのための資金が作れず、引っ越しもままならないという人も増えることが今から予想されているのです。
行政の支援が期待できれば理想ですが、それだけではなかなか解決しにくい2025年問題においては、団塊世代は今のうちに早い対策をおすすめします。


高齢者向け注文住宅のポイント

≪団塊世代の家づくりとは≫


今から家族を増やそうと考えている若い夫婦と団塊世代とでは、注文住宅のポイントは変わってきます。
高齢期を迎えた団塊世代には、介護を意識した家づくりが求められています。
手すりが必要な場合は、自分の身長と掴みやすい位置を計算して、廊下や階段、浴室などに設置すると良いでしょう。
また、車いすが必要な場合は、エレベーターの設置も選択肢の一つです。
現時点ではまだ必要がない人は、将来的に必要になったときのために、下地を補強などの準備をしておくことをおすすめします。
高齢になって筋力が衰えると、重いドアやドアノブ、ちょっとした床の段差なども障害となります。
引き戸にすると楽に開閉できるだけでなく、中で倒れたときも外から開けやすくなるでしょう。
浴室やトイレは冬場になるとヒートショックの危険性が考えられるため、部屋や廊下、脱衣所などとの温度差をできるだけなくすこともポイントです。
団塊世代は生活動線がコンパクトにまとまるように、使用する部屋を近づけるとさらに良いでしょう。




≪各部屋で気をつけるべきポイント≫


団塊世代が注文住宅を建てるときには、部屋のすみずみまで介護のしやすさを意識したいところです。
家の中で高齢者の事故が起きやすいとされている浴室は、特に注意が必要です。
濡れた床で転倒することのないように、濡れても滑りにくい加工や、すぐに乾く加工がされた床材を選ぶことは基本です。
その他、またぎやすい高さの浴槽を選ぶこと、誤って当たってしまったときに割れにくいガラスにしておくことなどが挙げられます。
トイレや洗面所は、2人入っても余裕のあるスペースを取っておいた方が、介護はしやすくなります。
キッチンは火を扱う場所なので、一歩間違うと大きな事故につながりかねません。
しかし、IH調理なら火を使わないから絶対に安全とも言い切れず、使い慣れていない人にとっては余計に事故の可能性を高めることもあるので、十分な注意が必要です。
団塊世代向けの注文住宅では、このように家の機能面で様々な工夫を施すことができます。
そして、家族とのコミュニケーションの取りやすさなど、介護を受ける側の気持ちも考えられた設計にすることも大切なポイントです。


在宅介護しやすい家の動線

≪在宅介護に向けた家づくりは女性の目線が必要≫


団塊世代が、介護する側からされる側に移行しつつあります。
老人ホームなどの介護施設に入所する人もいますが、団塊世代の多くは自宅で介護を受けながらの生活を選んでいます。
住み慣れた家で、愛する家族に囲まれながら介護を受けたいと思う気持ちは、誰にも否定できません。
実際に介護をどこで受けたいかを尋ねた調査によると、4割近くが自宅で介護を受けたいと答えています。
また、同じ調査では男性の方がその傾向が強いことも分かっています。
一方、介護する人は介護を受ける人の配偶者が最も多く、続いて子、子の配偶者となり、中でも在宅時間の長い女性の場合が約7割とされています。
しかし在宅介護は体力が必要な場面も多く、女性一人での介護には限界があるのも事実です。
部屋から散歩に連れ出す際の身支度や、階段の上り下りだけでも一苦労、という場合も実際にはあります。
だからこそ、団塊世代を家族に持つ家庭の家づくりには、在宅介護のしやすい設計が必要です。




≪在宅介護のしやすさは動線がポイント≫


家を建てる時から将来的な在宅介護を考えることができるなら、それに越したことはありません。
ただし、まだ元気なうちから完璧すぎる介護環境を作ってしまうと、臨機応変な変更がきかなくなる恐れがあるため、将来設計は大まかに決めておく方が無難です。
たとえば、どの部屋にベッドを置くか、どうやって外に出るか、車いすでどこを通るかなどをイメージしておけば、間取りのプランも変わってくるでしょう。
大まかな将来設計に留めておくことで、いざ在宅介護が必要になったときに、必要な部分だけをリフォームすることができます。
一方、トイレや脱衣所を広く取ったり、段差をなくしたりといったバリアフリーは、どんな人でも住みやすい環境なので最初から取り入れることをおすすめします。
団塊世代が介護されるとき、どこをどのように通ってどこへ行くかという生活動線をイメージすることは、在宅介護のしやすい家づくりに欠かせないポイントです。


在宅医療を受けやすい住環境

≪団塊世代が整えるべき住環境とは≫


介護が必要な団塊世代の多くが、在宅医療を望んでいます。
その一方で、現時点ではまだ不自由がなく、そんな必要は無いと思っている団塊世代も多くいますが、長い先行きを考えれば、どうしても備えは必要です。
将来的に自宅で最期を迎えたいと考えている人はなおさら、住環境の準備は必要でしょう。
在宅医療は、自宅に医師が訪問し診察をするだけではありません。
介護士や家族が介護にあたることをあらかじめ想定した造りにしておかなければなりません。
自宅のリフォーム、あるいは在宅医療にふさわしい住環境を備えた終の住まいを設計するには、相応の時間がかかるので、まだ元気なうちに準備をしておくことが望ましいでしょう。




≪住環境はどう整備すればよいか≫


在宅医療の観点で自宅をリフォームする場合、介護を受ける団塊世代とその家族、そして訪問する医師や介護士の3つの視点で住環境を見ることが大切です。
まず、介護を受ける団塊世代は、住み慣れた家で、家族が常に側にいる環境で介護・医療を受けたいという要望があります。
家族も、最期まで自宅で見届けてあげたいという思いはあることでしょう。
しかし、介護には現在の住宅のドア幅では入らない大型の医療機器が必要になったり、ただベッドから下ろすだけでかなりの体力が必要だったりという現実を前にすると、躊躇してしまいがちです。
訪問介護士の立場から見ても、専門的な介護をメインで行うことになりますから、在宅医療をしやすい住環境を整えてほしいという要望は切実なものでしょう。
常に家族がそばにいる環境で介護・医療を受けたいという思いは、基本となる住環境が整っていなければ成し得ないことなのです。
現在建設される家の多くは、ファミリー層などの核家族に向けた狭い家です。
しかし、在宅医療に必要なのは、介護者と被介護者の双方が動きやすく負担のない環境です。
団塊世代の人は今、人生の最期を見据えた終の住まいの計画を立てる時期にあるのではないでしょうか。


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